毛細血管総説論文がNutrientsに掲載

 生活習慣バイオマーカー指標として簡便なアプローチ
―爪床毛細血管指標が食生活の改善効果の可視化に有用であることを発見―

東北大学大学院農学研究科駒井三千夫名誉教授(白川仁教授)およびあっと株式会社(代表取締役:武野團)の共同研究グループは、毛細血管指標を活用した研究の臨床診断および不健康な食生活の改善における有用性に関して包括的レビューを行いました。当研究成果は、2024 年 6 月 18 日に、栄養学分野で評価の高い国際学術誌Nutrientsに掲載されました。
(Komai et al., Nutrients,2024,16(12):1914.doi:10.3390/nu16121914.)


【論文のタイトル】

爪床毛細血管スコープ:臨床診断および不健康な食生活改善における有用性に関する包括的レビュー

Nailfold Capillaroscopy: A Comprehensive Review on Its Usefulness in Both Clinical Diagnosis and Improving Unhealthy Dietary Lifestyles

【論文の概要】

 PubMedデータベースの文献検索から過去43年間にわたる全研究分野で327本の論文が見つかり、Nailfold Capillaroscopy(NC:爪床毛細血管スコープ)による形態変化の評価に関する研究を要約し、臨床診断や不健康な食生活の改善におけるNCの有用性に関して包括的にレビューを行いました。

【論文内容の解説】

過去10年間にわたり、不健康な生活習慣(喫煙、不適切な食事、睡眠不足、心理的ストレスなど)が爪床毛細血管の形態変化を引き起こすことが報告されています。これにより、爪床毛細血管の形態と生活習慣の関係を研究することは、不健康な状態や前疾患状態を示す指標となる可能性が高いです。NCのような簡便で安価、非侵襲的な方法は、日常の健康チェックにおいて有用です。

このレビューでは、NCの臨床診断と不健康な食生活の改善における有用性を検討し、米国とEUで発表されたPAD(末梢動脈疾患)関連のヘルスクレーム(健康強調表示)の概要を紹介しています。これにより、健康な微小血管血流と内皮機能を促進するための食事や栄養補給の役割についてまとめられました。

また、NCおよびその他の関連測定に基づいた食事および生活習慣の健康促進戦略が要約され、フラボノイドやその他の機能性食品成分と栄養素を用いた食事介入研究の必要性が解説されています。

【著者のメッセージ】

高齢化社会の課題解決には、病気になってからの治療ではなく、未病段階でのセルフケアが重要であり、健康状態を手軽にチェックできる指標が必要です。爪床毛細血管測定は生活習慣病、老化、疲労、ストレスなどによる健康状態の悪化の指標として利用できる可能性があります。本稿では、NCの利用状況とその生活改善や健康推進への適用について、文献システマティックレビューの成果を基に解説しています。また、諸外国におけるPADを指標とした研究や食事ガイドラインの実際について紹介し、微小循環と食事栄養の観点から毛細血管の指標を活用した食生活改善の推進や評価について提案しています。

【研究室詳細】

東北大学大学院農学研究科栄養学研究室は、栄養素および食品成分が健康にどのように影響するかに焦点を当てた栄養学研究の最前線に立っています。この研究は、より健康的な社会を推進するための先駆的な研究の一つとして大学の取り組み例を示しています。

【謝辞】

著者は、大阪大学の高倉伸幸博士および毛細血管ラボ社会実装コンソーシアムの他の学術メンバーに、有益な議論に感謝します。

【用語説明】

注1. NC: Nailfold Capillaroscopy 爪床毛細血管スコープ

【論文情報】

タイトル:Nailfold Capillaroscopy: A Comprehensive Review on Its Usefulness in Both Clinical Diagnosis and Improving Unhealthy Dietary Lifestyles

著者:Michio Komai*, Dan Takeno, Chiharu Fujii, Joe Nakano, Yusuke Ohsaki and Hitoshi Shirakawa

*責任著者:東北大学・名誉教授 駒井三千夫

掲載誌:Nutrients

DOI:https://doi.org/10.3390/nu16121914

URL: https://www.mdpi.com/2072-6643/16/12/1914

 

 

【詳細プレスリリース本文】